2026年上半期における中国鉄鋼企業の収益性悪化と操業停止状況について
- 生産動向:粗鋼・銑鉄ともに前年割れ
2026年上半期の中国の粗鋼累計生産量は4億9,995万トン(前年同期比3.0%減)、銑鉄累計生産量は4億2,664万トン(同2.8%減)となった。そのうち、主要鉄鋼企業(注1)の粗鋼生産量は4億800万トン(同3.7%減)であり、業界平均を上回る減少幅を記録した。 - 需要動向:見かけ消費量の停滞と新興分野への構造変化
鉄鋼の見かけ消費量(国内生産量 + 輸入量 - 輸出量)は、前年同期比で減少傾向にある。セクター別の鉄鋼消費を見ると、製造業は建設業に比べて需要が好調であるものの、市場全体を押し上げるほどの勢いはない。
製造業のなかでも、建設機械や一般鉄骨構造物といった従来の分野における需要は縮小している。一方で、風力発電、エネルギー貯蔵、海洋工学、新エネルギー車(NEV)、ハイエンド機器といった新興分野の需要は堅調に伸びている。
しかしながら、新興分野が占める鉄鋼消費量のシェアはまだ全体的に低く、従来の主要産業における需要減少によって生じたギャップを埋めるまでは至っていない。 - 財務・収益分析:コスト高に伴う利益率の急落(2026年上半期)
報道によると、上半期における鉄鋼業界の営業費用は営業収益の95.2%を占め、前年同期比で0.2ポイント上昇した。この営業費用は、主に鉄鉱石、コークス・石炭、銑鉄スクラップなどの原材料費のほか、エネルギー費用(水道・電気・ガス)、直接人件費、減価償却費、環境対策費用などで構成されている。
また、費用対利益率は0.91%(100元の費用に対して0.91元の利益)で、売上高利益率は0.86%(100元の販売高に0.86元の利益)となった。両指標とも前期比で若干の改善が見られたものの、前年同期比ではそれぞれ0.38ポイント、0.37ポイント低下している。この結果は、鉄鋼業界の収益性が前年に比べて大幅に悪化していることを示している。 - 【参考】2025年上場企業27社の決算レビューと製品別の明暗
中国冶金報の公式サイト「中国鉄鋼新聞網」は、「2025年上場鉄鋼企業27社の業績レビュー:業界の自主規制が成果を上げ、利益は2022年以来最高水準に達する」(2026年7月2日付)と題する記事を掲載した。同記事では、国内の上場鉄鋼企業27社(以下、上場企業27社)を対象に、2025年度決算報告書の主要経済指標を分析している。
報道によると、上場企業27社の総営業収益は1兆6963億元、営業費用は1兆5852億元、利益は178億元を記録し、平均売上高利益率(利益÷営業収益)は1.05%となった。また、同期間における鋼材1トン当たりの平均売上高は4790.4元であり、そのうち特殊鋼や鋼板を主軸とする8社では1トン当たり5000元を超えた。なお、鋼材1トン当たりの利益は平均50.3元(1トン当たり売上高×販売利益率)であった。
同分析では、27社を特殊鋼企業、複合企業(注2) 、鋼板企業、長尺鋼材企業の4種類に分類している。これら27社の鋼材生産量は合計3億5,400万トン(前年比0.1%増)、販売量は3億5,400万トン(前年比0.3%減)となった。
収益性の高さは、特殊鋼企業>複合的企業>鋼板企業>長尺鋼材企業の順であった。製品カテゴリーによって明暗が大きく分かれる結果となった。特殊鋼企業(6社)は売上高利益率2.98%と最も高く、総利益72億4,000万元を達成し、業界の牽引役となった。複合的企業(10社)は、全セクターで最大の総利益75億1,000万元を計上し、赤字企業の割合も30%と最も低く抑えられた。鋼板企業(8社)は利益率0.72%と低水準にとどまった。インフラや建設に依存する長尺鋼材企業(3社)は、総利益-26億7,000万元(利益率は-3.15%)と沈み、赤字企業の割合も66.7%に達する極めて厳しい状況となった。
表 中国における上場鉄鋼企業27社の経営状況
| 分類 | 社数 | 利益 (億元) | 売上高利益率 (%) | 赤字経営企業の割合(%) |
| 特殊鋼 | 6 | 72.4 | 2.98 | 33.3 |
| 複合的企業 | 10 | 75.1 | 1.30 | 30.0 |
| 鋼板企業 | 8 | 56.8 | 0.72 | 37.5 |
| 長尺鋼材企業 | 3 | −26.7 | −3.15 | 66.7 |
- 企業の対応:自主的減産と「メンテナンス」の長期化
鉄鋼業界の損益拡大が続く中、生産企業は「自社を守るため、自主的な減産」へと踏み切っている。Mysteelの発表によると、2026年6月には、12の製鉄所がメンテナンスによる操業を停止した。さらに7月8日時点では、全国201の生産企業のうち55社(計95基の高炉)がメンテナンスまたは操業停止状態にある。
今回のメンテナンスは、河北省、山西省、江蘇省、福建省、四川省、雲南省など数多くの地域に及び、高炉、転炉、圧延といった全工程が対象となっている。各社が計画するメンテナンス期間は長期化しており、主な事例は以下の通りである。
➤唐山燕山鋼鉄:7月5日から2560m³の高炉と180トンの転炉を65日間停止
➤河北新達鋼鉄:1080m³の高炉を45日間停止( 開始日は各社で異なる)
➤江蘇永鋼鉄:高炉を30日間停止 - 総括:操業停止の常態化がもたらす長期的リスク
鉄鋼企業が「メンテナンス」という名目で長期にわたり操業を停止することは、需給不均衡期における防衛策ではあるものの、これが常態化・長期化すれば、新技術開発への投資を弱体化させ、技術系人材の流出等を引き起こすリスクがあると指摘されている。
出典:中国鉄鋼新聞網、Mysteel等の報道に基づき整理。
注1:中国鉄鋼協会(CISA)の統計となる主要な鉄鋼企業は約100社強であり、これらが総生産量の80%以上を占めている。残りの約20%は、各地の独立系圧延工場、小規模な独立系電気炉製鋼所、および中堅企業としての資格を有してない地方の中小企業で構成されている。
注2:複合企業とは、長尺鋼材、鋼板、鋼管など、多様な鋼材の生産能力を持つ企業である。

