中国における全固体電池の政策動向と製造・技術課題に関する総合レポート

  1. 国家戦略と税制優遇措置

 2026年9月、中国の工業情報化部など7部門は、国家レベルの「新型電池産業発展『第15次5カ年計画』」を共同で発表し、2030年までに全固体電池の一定規模での実用化(量産化)を実現するとの目標を明示した。

 また、財政部、税関総署、国家税務総局が共同発表した「一部の電池に対する消費税政策の調整に関する公告」に基づき、2026年9月1日から2028年12月31日までの期間、全固体電池は消費税が免除される。一方、半固体電池や基準を満たさないハイブリッド型電池セルは免税の対象外となり、従来通りリチウムイオン蓄電池などに適用される消費税が課される。

これらの措置は、全固体電池技術に対する資本や企業の投資を促進することを目的としている。

  1. 全固体電池の定義と分類

 本税制や国家計画において、全固体電池(ASSB:All-Solid-State Battery)とは、正極と負極の間を、固体電解質を介してイオンが移動する電池を指す。電池の内部構造において、主要な構成材料(正極、負極、電解質)はすべて固体状態でなければならず、遊離した液体成分は含まないことが条件となる。

 したがって、半固体電池や固体・液体混合型の電池セルは、免税対象となる「固体電池」の範疇には含まれず、免税措置は適用されない。これらは従来通り、リチウムイオン蓄電池などの基準に従って申告・納税を行う必要がある。

  1. 開発フェーズと固体電解質の技術路線

 中国における全固体電池技術は、「研究室レベルの開発」から「パイロット生産および小規模量産」への過渡期にあり、研究開発や製造プロセスの両面で多くの課題に直面している。

 業界内では、固体電解質の技術路線として「硫化物系」「酸化物系」「ポリマー系」の3つが存在し、主導権を握る技術は完全には統一されていない。それぞれの路線には以下のような課題があり、いずれも実用化に向けた早急な解決が求められている。

・硫化物系:高いイオン導電率を持ち「本命」と目されるが、水分や酸素に対して極めて敏感であり、空気に触れると猛毒の硫化水素ガスが発生するため、製造・管理環境への要求が非常に厳しい。

・酸化物系:化学的安定性は高いものの、「脆さ」が大きいという物理的な問題がある。

・ポリマー系:製造は比較的容易だが、低温時の導電率が低いという課題を抱えている。

  1. 製造プロセスにおける主要なボトルネック

 全固体電池の量産化・実用化に向けては、技術路線以外にも製造設備、環境管理、品質管理、知財の面で大きな障壁が存在する。

  • 既存の生産ラインとの不互換性

 全固体電池の製造プロセスは、既存の液系リチウムイオン電池の生産ラインとは互換性が極めて低い。既存の塗工や注液といった主要工程の設備をそのまま流用・転用することはできず、高密度プレス(高圧密化)、精密積層、真空環境下での組み立てなど、全固体電池専用の製造設備を新たに開発する必要がある。

② 厳格な環境管理と高コスト化

 特に硫化物系全固体電池の場合、製造工程全体を露点マイナス40℃以下、かつ超低露点不活性ガス(アルゴンガスや超乾燥空気など)の環境下に置くことが求められる。このため、工場の建設や維持コスト、エネルギー消費量、そして技術的ハードルが極めて高くなる。

③ 品質の一貫性と歩留まりの壁

 現在、全固体電池は数百メガワット(MW)級のパイロット生産ラインの段階にある。固体電解質層の成膜(製造)プロセスが複雑であるため、大容量セルにおける品質の均一性や歩留まりを、車載用途を求められる極めて厳しい水準(PPBレベル)にまで短期間で引き上げることは困難である。

④ 原材料の供給不足と高止まり

 硫化物系における主要原材料である硫化リチウムは、いまだ大規模な量産体制が確立されていないため価格が高止まりしている。さらに世界的な供給不足も深刻な課題となっている。

⑤ 基本特許・コア技術の不足

 全固体電池(特に最も高い性能が見込める硫化物系)に関する特許について、中国が保有するものは「応用・改良・周辺技術」が大部分を占める。一方で、基幹材料やコア技術に関する特許は、主に日本(トヨタなど)や韓国(サムスン、LGなど)が保有している。

  1. 最新の企業動向と実用化への進展

 数々の課題に直面する中、中国企業による実用化への技術革新の動きも出始めている。

 10月13日、広州巨湾技研有限公司は、業界初となるギガワット時(GWh)級の全固体電池生産ラインが正式に稼働を開始したと発表した。この生産ラインは、ゼロから新設するのではなく、既存の液系電池用ラインを技術改修・アップグレードしたものである。今回製造された電池セルは、120℃の真空環境下で外装に穴を開けた状態で6時間連続加熱試験において、重量減少率が0.5%未満を記録し、判定基準をクリアした。また、本製品は、2026年7月1日に施行された中国の新たな国家規格GB 38031-2025「電気自動車用動力蓄電池の安全要求事項」で規定されている。電池セル(単体)のすべての安全試験に合格したと報道されている。

図 全固体電池セルの製品工程(出所:広州巨湾技研有限公司HP)

 報道によると、この全固体電池の重量エネルギー密度(比エネルギー)260〜480Wh/kgに達し、急速充電にも対応している。さらにサイクル寿命も従来の液系リチウムイオン電池に匹敵する水準を確保しているという。

出典:中関村儲能産業技術連盟、新浪財経、新浪網、東方財富等の報道に基づき整理 

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