2020年インドのエネルギー事情

  1. 概要

   EIAによると、インドの一次エネルギー消費量は1990年から2018年の間にほぼ3倍になり、石油換算で推定9億1600万トンに達した。

   図1 に一次エネルギーに占める各エネルギー消費の割合を示した。石炭は2018年も引き続いてインドの全エネルギー消費量の大半となる58%を供給し、石油やその他の液体は26%、天然ガスは6%、伝統的なバイオマスと廃棄物は20%を占めている。

   BPのエネルギー見通し2020によると、インドは2050年まで引き続いて一次エネルギーが増加すると見られている。

  その中で、天然ガスは、地域及び地球環境への配慮から、インド政府は2030年までに現在の6%から15%に引き上げる計画である。

  ここ数年間、電力の利用が住宅部門と商業部門に広がるのに伴い、伝統的なバイオマスと廃棄物の利用は少なくなったとのことである。

図1 インドの一次エネルギーの割合

(https://www.eia.gov/international/analysis/country/IND )

   今のところ太陽光、風力、水力発電等の再生可能エネルギー源は一次エネルギー消費割合のごく一部を占めているにすぎないが、潜在容量は大きいと考えられ、将来の伸びが期待されている。

   BPが推定しているインドの再生可能エネルギーの成長に関する3つのシナリオ(Rapid、Net Zero、Business As Usual)によれば、再生可能エネルギーの平均年間成長率は9%〜13%になるとしており、2050年には再生可能エネルギーの一次エネルギーに占める割合が石炭に次いで2番目を占めると推測している。

  1. 化石燃料の動向

2.1石炭と褐炭生産動向

   2017-18年の褐炭を除く石炭の暫定総生産量は6億7,540万トンで、前年比2.7%増加した。

    図2に2017年から2018年にかけてのインドの州別の石炭生産割合を示した。オリッサ州が、インド最大の生産州で、総生産量の21.2%を占めており、チャッティースガル州がそれに続いて21.1%を占めている。

   以降、総生産量に占める割合は、ジャールカンド(18.26%)、マディヤプラデーシュ(16.6%)、テランガーナ(9.18%)、マハラシュトラ(6.25%)、西ベンガル(4.33%)、ウッタルプラデーシュ(2.71%)であった。

   残りの0.37%は、アッサム、ジャンムー・カシミール、メガラヤの各州からものであった。石炭生産の95%がCoal India Ltd. 等の公営企業による。

   2017-18年の褐炭の暫定生産量は4,625万トンで、前年度と比較して約2.27%増加した。タミルナードゥ州だけで生産の約50.95%を占め、以降、グジャラート州の28.95%、ラジャスタンの20.10%と続く。

  2016-17年の褐炭の生産を報告した19の炭鉱のうち、10ヵ所はグジャラート州、6ヵ所はラジャスタン州、残りの3ヵ所はタミルナードゥ州にある。

2.2石炭政策の動向

2.2.1 石炭関連税制

   石炭はインドの国や地方政府の予算に大きく貢献している。Coal India Limited (CIL)の利益の一部は配当として国や地方の歳入となる。石炭生産に伴う負担金やロイヤリティも歳入のソースとなる。

   クリーンエネルギー税は2010年から石炭に課されており、2016年までに石炭トン当たり400インドルピー(5.78米ドル)に達した。2017年にさまざまな既存の税を含む一般物品サービス税(GST)が導入された結果、税制が簡素化され、石炭の税負担が軽減された経緯がある。

   石炭に課されたクリーンエネルギー税の歳入は当初はクリーンエネルギープロジェクトや技術開発に投資する国家クリーンエネルギー環境基金(National Clean Energy and Environment Fund, NCEEF)に割り当てられ、新・再生可能エネルギー省の予算の主だった部分を占めていたが、NCEEFが廃止されたため、今は、歳入相当額は、GST改革で影響を受けた企業収益を保障するために使われている。

   また、石炭生産と輸入は、保障税として石炭トン当たり6米ドルが課税される。

2.2.2採炭の民営化

   インドの石炭生産の民営化は、1970年代に石炭部門が国有化されて以来の根本的な改革となる。この改革でCILの市場独占状態は正式に終わることになった。

   2015年の炭鉱法の改正で、民間企業は、まだ割り当てられていない石炭の鉱区を政府のオークションで手に入れ開発することができるようになった。落札者は、石炭を自由に販売でき、市場に応じて生産を炭鉱の定格容量未満に減らすことができることになった。

   内閣経済委員会(CCEA)は、2018年2月にオークションの手順を承認し、採炭の民営化を開始した。入札は、州政府に支払われる石炭の生産トンあたりのロイヤルティに対して行われ、最高価格のオファーを提出する者が落札者となる。

   NTPCを含む公営の発電所は競争入札から除外された。但し、別のプロセスで、最近再割り当てされた炭田(89のうち41)で供給保証が受けられるようになった。

  インド政府のオークションは2回キャンセルされたが、2019年12月のオークションでは、5つの鉱区を(BirlaとVedantaに)民営企業に割り当てた。

   2019年、インド政府は、自家消費用石炭の生産者が自由な価格で生産量の最大25%を販売できるようにした。外国企業は炭鉱への投資をしなくても、石炭選炭機を所有・運営してよいことになった。

   2019年9月、インド政府は、石炭部門への外国直接投資を増やすことを目指し、炭鉱自体も外国企業に完全に開放することを決定した。現時点で権利を得た外国企業についての情報は得られていない。

  1. 石油および天然ガス

3.1埋蔵量

   図3に2018年3月時点のインドにおける原油の地理的賦存状況を示した。これによると、最大埋蔵量が西部沖合(40%)で、次にアッサム(27%)であるのに対し、天然ガスの最大埋蔵量は東部沖合(38.13%)、西部沖(23.33%)である。

   図4には天然ガスの2018年3月時点の埋蔵状況を示した。推定埋蔵量は、前年に比べて3.87%増加しており、増加に貢献した主な州はアルナーチャルプラデーシュ州、ラジャスタン州、アンドラプラデーシュ州、タミルナードゥ州である。

   インド政府は、国内の石油や天然ガスの生産を促進させるための改革を一連の政策イニシアティブのもとで進めている。この改革には投資を増やし、雇用を生み出し、透明性を強化するための法規制の見直しや制約を軽減することが含まれている。

3.2  石油・天然ガス政策の概要

3.2.1  石油・天然ガス政策の概要小規模地域の生産事業化(Discovered Small Fields Policy, DSFP)の政策

   このDSFPの主要目的はOil & Natural Gas Corporation Ltd.(ONGC)とOil India Ltd(OIL)国営石油会社(National Oil Companies, NOCs)が発見した国内の小規模油田や天然ガス田地域で、未だに事業化できていないところを対象としており、落札した事業者にはロイヤリティ制度を緩和し、税制上の優遇処置と自由な価格決定権や販売ができる権利が包含されている単一ライセンスが与えられる。

   2015年9月に、インド政府はDSFPに基づいて69の地域を承認した。

   最初の入札は2016年5月に開始され、67の地域を46契約地域にして国際入札を行い、2017年3月には、43件の地域に対して、合計30件の契約が締結された。

   これにより、4千万トンの石油と22BCMの天然ガスが15年間に渡り収益化されることになった。

   2018年2月にインド政府はDSFCによる第2ラウンドの入札を実施することを承認した。第2ラウンドの入札では59の対象地域で約189.61MMTの石油と石油換算の天然ガスが入札対象になっている。57の契約地域を対象とした合計23件の契約が2019年3月に調印された。

3.2.2 炭化水素の探査とライセンス政策(Hydrocarbon Exploration and Licensing Policy, HELP)

 2016年3月にインド政府が公表したHELPは、従来型および非非在来型炭化水素資源の探査と生産、価格設定、およびマーケティングの自由決定権を包含する単一のライセンスを提供するもので、生産共有契約(PSC)体制から収益共有契約(RSC)体制へのパラダイムシフトであり、探査および生産(E&P)活動の規制を完全に見直すことになった。

3.2.3全国地震探査プログラム(National Seismic program, NSP)

   インド政府は2016年10月に国家地震探査プログラム(NSP)を策定し、データが不足しているインドのすべての堆積盆地の未評価地域を評価することにした。これにより、政府は直線距離で48,243kmにわたる2次元の地震探査を行う提案を承認した。

 

4.  再生可能エネルギー

4.2  再生可能エネルギー源   

   図5に2018年3月時点のインドにおける再生可能エネルギーのポテンシャルを示した。再生可能エネルギーからの発電では、風力、太陽光、バイオマス、小水力、バガスのコージェネレーションなどに高いポテンシャルがある。

   2018年3月時点で、推定される再生可能エネルギーポテンシャルの地理的分布(図6参照)は、ラジャスタン州が最も高いシェアで約15%(162,238 MW)、それに続いてグジャラートが11%(122,086 MW)で、マハラシュトラが10%(113,933MW)と続く。これらは主に太陽光発電のポテンシャルによる。

   政府は、2022年3月までに送電網に接続再生可能な電力として175GWを達成するという目標を掲げている。その構成は100GWの太陽光、60 GWの風力、10 GWのバイオマス、5GWの小水力である。さらに、MNREは2022年までに1GWの地熱発電を実現することを目標としている。

   2018年の国家電力計画では2027年までに275GWの再生可能エネルギーによる発電を達成するという目標を発表しており、それは電源設置容量の44%、全発電量の24%に相当する。

(http://www.indiaenvironmentportal.org.in/files/file/Energy0Statistics%202019.pdf)

   バイオマスと廃棄物による発電については22年の国家目標である10GWをほぼ達成している。製糖工場のバガスによるコージェネレーションの貢献が大きい。

   製糖工場およびその他の産業におけるバイオマスのコージェネレーションの促進を支援するスキームがあり、効率的なコージェネレーション技術へ投資することで得られる追加容量(MW)毎に資本補助金を提供することになっており、2020年まで実施された。

   より効率的なコージェネレーションシステムにアップグレードすることで、製糖工場からの発電量を増やす余地があるとしている。

4.2 バイオマス混焼

   インドは、石炭火力発電所でバイオマス混焼(5~10%)を推進する政策を導入した。これは、石炭の使用を相殺する手段として機能すると同時に、畑で燃やされ大気汚染を引き起こす可能性のある農業廃棄物を有効利用することになる。

   対象となる石炭火力発電所は、1)石炭の価格が高い、2)石炭の年間使用量が多い、3)近隣のバイオマスが豊富で供給が期待できるなどの所である。

   NTPCは廃材、森林の残置材、作物残渣、肥料などを石炭と混焼することを計画している。

   インドの2016年の廃棄物管理(SWM)規則は、廃棄物エネルギー(EfW)の効率的利用を奨励しており、例えば、州政府はEfWからの電力をすべて調達することが定められている。また、同規則では企業は半径100km以内の廃棄物を利用できる場合、その利用促進を支援している。さらに、廃棄物の分別を促進し、リサイクルできない高発熱量の廃棄物をエネルギーとして利用することを奨励している。

   この規則では、固形廃棄物による廃棄物由来燃料(RDF)プラントから100 km以内にあるすべての産業用石炭火力発電ユニットにその利用を義務付けており、規則の通知日から6か月以内に、少なくとも燃料の5パーセントをRDFに置き換えるための取り決めを行うことを定めている。

   同規則では、新・再生可能エネルギー源省が、ごみ焼却発電所のインフラの作成を促進し、RDFを使用する発電所に適切な補助金またはインセンティブを提供する必要があるとしている。

4.3再生可能エネルギーパークの建設

   インドのモディ首相はグジャラート州のカッチ地区にあるハイブリッド再生可能エネルギーパークで、30GWの再生可能エネルギーを生産するメガパークの建設を着工式に出席した。

   このパークは72,600ヘクタールで、風力と太陽エネルギーの貯蔵専用のハイブリッドパークゾーンと風力発電専用のゾーンがある。

   インドは、世界で最も急速に成長するエネルギー需要市場になると予想されており、2030年までに水力発電からの60 GWを含め、510GWの再生可能エネルギー発電容量の確保を目指している。

   2020年初め、インドの電力・新・再生可能エネルギー大臣のRK Singhは、2030年までにクリーンエネルギー源からの発電設備容量の60%を確保すると発表した。

   同大臣は7月に、今年、水力発電と開発中のプロジェクトを含むインドの再生可能エネルギー容量は約190GWであると述べた。

  1. https://www.eia.gov/international/analysis/country/IND
  2. https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-energy-outlook-2020.html
  3. http://ibm.nic.in/writereaddata/files/07102019170220COAL_AR_2018.pdf
  4. http://www.indiaenvironmentportal.org.in/files/file/Energy%20Statistics%202019.pdf
  5. http://petroleum.nic.in/policy-reformsprograms-incentives
  6. https://niti.gov.in/sites/default/files/2020-01/IEA-India%202020-In-depth-EnergyPolicy.pdf
  7. https://coal.nic.in/sites/upload_files/coal/files/coalupload/policies_27-02-18.pdf
  8. https://pib.gov.in/PressReleaseIframePage.aspx?PRID=1643176
  9. https://mercomindia.com/mnre-biomass-program-extended/
  10. https://energy.economictimes.indiatimes.com/news/power/ntpc-to-use-biomass-to-co-fire-coal-based-power-plants-cut-emissions/66302484
  11. http://www.cleanfuture.co.in/2020/09/02/kutch-hybrid-energy-park-project-is-being-fast-tracked/

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